“Shin Megami Tensei IV“, Dengeki Online, ASCII Media Works, 9 May 2013. [Japanese]
5月23日に、インデックスのゲームブランド・アトラスから発売される期待のRPG『真・女神転生IV』。ついに発売日まで1カ月を切った4月某日、開発を終えた山井一千ディレクターに直撃インタビューを行い、本作に込めた想いについて語っていただいた。
■“革新を目指すという伝統”を踏襲して作られたナンバリングタイトル
──今回の『真・女神転生IV』は、シリーズとしてはPS2で発売された『真・女神転生III -NOCTURNE-』以来のナンバリングタイトルになりますよね。まずは、その開発に踏み切った経緯を教えてください。
10年ぶりのナンバリングタイトルということで、ファンの皆さんからの期待も大いに感じる本作ですが、開発に踏み切った経緯と言われると、そんなにドラマチックな要素はなくてですね……。
──いきなりぶっちゃけますね(笑)。いやいや、きっとあるはず。
そう、あれはインドに行った時に……って、そういうのがあればいいんでしょうけど(笑)。はっきり言ってしまえば、「そろそろ『真・女神転生』を作る時期が来た」ってところですね。
これまで僕は『デビルサマナー 葛葉ライドウ』シリーズを手掛けておりまして、それが一段落した後、『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』の開発を手伝っていたんです。そちらの開発が終わった際に、金子(金子一馬氏。『真・女神転生』シリーズの生みの親の1人で、本作ではシナリオ原案を担当している)と話す機会がありまして、「ユーザーさんも待っているし、そろそろ『真・女神転生IV』を開発する時期じゃないか」という話をしました。そこから企画が動き出した感じですね。
──確かに、ユーザーはナンバリングタイトルをずっと待っていたと思うんですよ。もちろん、その他のシリーズもおもしろいんですけど、やっぱりナンバリングは何か重みが違うというか。
そう言ってくださるファンの方もたくさんいらっしゃるようで、とてもありがたいことです。
──やはり、ナンバリングとなるとファンの反応も違うと感じられますか?
そうですね。本当にたくさんの方から期待の声をいただいております。中には、不安を抱えておられるファンの方もいるようですけど……。
──ナンバリングゆえの期待と不安、ってことですかね。ファン心理として、そこは私もよくわかります。
今回、キャラクターデザインを土居(土居政之氏。これまでに『カドゥケウス』シリーズやPSP用『ペルソナ2』シリーズのキャラクターイラストを手掛けている)に任せたり、物語の舞台を“東のミカド国”と“東京”の2つにしたりと、従来シリーズと比べて、わかりやすく見た目が変わっていますからね。そういった部分を不安に思われているのかな、とは分析しています。
自分としては、やっぱり“革新”ですね。というよりも、“革新こそが伝統である”と言ったほうが正しいでしょうか。──なるほど。ちなみに、本作を手掛けるにあたり、“革新”を目指すのか“伝統”を重んじるのか、どちらに比重を置かれたのでしょうか? 『真・女神転生』風に言うのなら、LAW(ロウ)なのか、CHAOS(カオス)なのかと聞いたほうがいいのかもしれませんが(笑)。
──それは、どういう意味でしょう?
『真・女神転生』だけに限らず、『ペルソナ』や『デビルサマナー』も含めて、僕たちスタッフは「とにかく新しいことをやりたい」というところから企画を立ち上げるんですよ。前と同じことをやるのではなく、もっとおもしろいものを作る。“革新”を常に志しているわけです。
──なるほど。“革新を目指す”ということ自体が、すでに伝統になっているんですね。
そういうことですね。例えば、『仮面ライダー』シリーズや『スーパー戦隊』シリーズなど、世代を超えて愛されているシリーズ作品って、伝統を重んじながらも、時代に合わせて内容やテーマを柔軟に変化させていると思うんです。不変な部分はしっかりと踏襲しているけど、時代の流れに合わせて変える部分もある。だからこそ、30周年や40周年を迎えられているのだと思うんです。
『真・女神転生』シリーズで言えば、“ある日、日常が急変した世界を冒険する”というテーマは不変です。しかし、だからといって常に現代の東京が舞台じゃなければいけないと思っているわけではありません。
──だからこそ、今回は東京に加えて“東のミカド国”という、ファンタジー世界のような舞台も登場した、ということなんですね。
ええ。ただ、それでも描きたいテーマは不変なんです。日常にあるさまざまな問題とか、みんなが抱えている不安だとか、そういうところに寄り添いつつ、さらにその時々のトレンドも巧みに取り入れていく。変わった部分も多いけれど、根底にあるものは同じ。それが、いわゆる『メガテン』だと僕は思っています。
──サンプルROMをプレイさせていただいているので、おっしゃられていることはよくわかります。見た目は変わったと感じられる部分もあるけれど、根底にはどっしりと『メガテン』の伝統が根を下ろしているというか……。さすがだなと思いました。
ありがとうございます。楽しんでいただけているようで何よりです。
──見た目といえば、今回、インターフェイスが大きく変わりましたよね。すごくオシャレになったというか。
あれはオシャレを意識したわけではなく、時代のトレンドを取り入れたことで変わった部分ですね。具体的には、今回のインターフェイスはスマートフォンやタブレットPCをヒントにしました。「現代にCOMPがあったらどうなるか?」と考えたら、きっとタッチパネルっぽくなるんじゃないかという考えがあったので。
──なるほど。
『真・女神転生』や『真・女神転生II』が、パソコンでDOSコマンドを走らせているようなイメージだったのは、それがその当時のトレンドだったからだと思うんです。
──常に近未来というか、サイバーなイメージも『真・女神転生』の伝統ですからね。
2013年の我々にとっては、これだけデジタル機器が普及しているわけですから、インターフェイスもそれを取り入れて洗練するべきだろうと。そういう考えから生まれたものなんですよ。
■新規層も楽しめるように仕上げるのが命題! ファンがニヤリとする要素も!!
──ゲーム中には、過去作を遊んでいるとニヤリとするような要素がいっぱい散りばめられていますが、それはシリーズを通して遊んでいるファンを楽しませるために盛り込んだものなのでしょうか?
もちろん、そのような意識はあります。というより、作っている人間も『メガテン』が好き人間ばかりなので、自然とそういった要素を入れちゃうという部分も大きいんですけどね(笑)。それは、伝統あるシリーズ作品の最新作ならではの部分と言えるでしょう。──ゲーム中には、過去作を遊んでいるとニヤリとするような要素がいっぱい散りばめられていますが、それはシリーズを通して遊んでいるファンを楽しませるために盛り込んだものなのでしょうか?
──それと同時に、新規ユーザーのこともしっかり考えて作られているように感じられます。
できるだけ多くのユーザーさんに『メガテン』の楽しさをお伝えするというのが、本作の命題としてありますので、新規ユーザーさんでもバッチリ楽しめるようさまざまな工夫を盛り込みました。プレイすれば確実に魅力をわかってもらえるメガテンシリーズを、食わず嫌いされたらイヤですからね。例えば、戦闘システム。本作でも『III』と同様、敵や味方の弱点を考慮しつつ戦う“プレスターンバトル”を採用しています。これはすでにほぼ完成したシステムなので、熟練者、初心者問わず楽しめると考えたからです。
──とはいえ、かなり改良されてはいますよね。“ニヤリ”とか。
そうですね。今回は敵の弱点を突くなど、こちらが有利になる行動を取ると、キャラがニヤリと笑うようにしました。この状態になると、攻撃がほぼクリティカルになったり、弱点をほぼ無効化できるようになったりと、さまざまな恩恵が得られます。もちろん、敵もニヤリとしますので、戦闘がよりスリリングになっています。
──ボス戦でも、ニヤリとすれば一気に不利な状況を打開できたりしますよね。
はい。プレスターンバトルという枠組みは変えずに、プレイヤーがより楽しめるための要素を盛り込もうという狙いから生まれたアイデアですね。
──ちなみに、味方全員をニヤリとさせると、恩恵がありますよね?
お、すごいですね。全員をニヤリとさせることに成功されたんですね。なかなか難しいと思うんですけど。
──ええ、ちょっと苦労しました。サプライズがあってうれしかったです。
運の要素も絡みますので、なかなか難しいかもしれませんが、プレイヤーの皆さんにも、ぜひ狙ってみてほしいですね。他にも、悪魔の集団と戦う“軍勢”とか、いろいろ新要素を盛り込んでいます。
──それらの新要素を盛り込んだ最大の狙いとは?
バトルをドラマチックにしたいっていうのが、根底にありますね。例えば、ボス戦の前に出てくる選択肢で特定の答えを選ぶとバッドステータスが付くとか、とにかく戦いを盛り上げるための要素が満載です。それまで防戦一方であっても、ニヤリで一発逆転が狙えますしね。
──バトル中に悪魔合体ができるのも、ある意味一発逆転の要素ですよね。
そうですね。本作ではMPが尽きた時や、味方がみんな瀕死の時などに悪魔を合体させることで、逆転のチャンスを生み出せるようにしています。仲魔が1体減るというリスクもあるので乱発はできないと思いますが、奥の手の1つとして活用してもらいたいです。
──戦闘システムはもちろん、ミステリアスな物語にもかなり力が入っているなと感じました。
ありがとうございます。もちろん、物語もものすごくこだわって作らせていただいたつもりです。──戦闘システムはもちろん、ミステリアスな物語にもかなり力が入っているなと感じました。
──黒きサムライが出てきた時はワクワクしましたね。「『ストレンジジャーニー』みたいなのが出てきた!!」って(笑)。
今回、サムライであったり東のミカド国であったりといったシナリオの原案を金子からもらっているわけですが、せっかくなので遊びっぽく足してみたいなと。ファンにとってのスパイスになればいいなってレベルなので、『ストレンジジャーニー』と関連している、といったことではまったくないんですけどね。
──お話的につながっているわけではないと?
ないですね。あくまでオマケ的なものなので、『ストレンジジャーニー』を遊んでいないと楽しめないとか、そういったことはまったくありません。ただ……
──ただ?
ちょっとした遊び心というか、裏設定的なものは入れさせてもらっています。たとえば『ストレンジジャーニー』のナビゲーションシステムは“アーサー”という名称だったんですよ。本作ではその改良版って設定で、“バロウズ”と。
──アーサーがA、その改良版であるバロウズはB! ファンならニヤリとしてしまう!!(笑)
お話的にはまったく関連性はないんですけどね。そういったファン向けの要素も散りばめておりますのでご期待ください。
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