Famitsu: “Okada at Toudai”

“Kouji Okada discussed the secrets of creating “Megami Tensei” during May Day at Tokyo University,” Famitsu, Enterbrain, 25 May 2008. <http://www.famitsu.com/game/news/1215408_1124.html


Kouji Okada discussed the secrets of creating “Megami Tensei” during May Day at Tokyo University

  • “I wanted to share the value of good and evil with players [literally: users]” (Okada)

2008年5月24日、25日の2日間にわたって東京大学の本郷キャンパスで開催されている”五月祭”。各種催しや研究展示が行われるこの学園祭の開催初日に、人気RPG『女神転生』シリーズのプロデューサーを長年にわたって務めてきた、ガイアの岡田耕始社長が”『女神転生』誕生秘話”と題した講演会を実施。同シリーズの開発経緯や、ゲームの世界観などについて語った。

▲今回の講演は東京大学の公認サークル”神社・神道研究会”の主催で行われた。聴講者は学生から社会人まで幅広く、『女神転生』シリーズの人気の高さを改めて実感することができた。

『女神転生』シリーズは、西谷史氏の小説『デジタル・デビル・ストーリー』を軸とするメディアミックスコンテンツのひとつとしてスタートした作品。ゲームでの展開は、’87年に第1作目『デジタル・デビル物語 女神転生』が、’90年に第2作目が、それぞれナムコ(現、バンダイナムコゲームス)からファミコン用ソフトして発売。メーカーがアトラスに移ってからは、『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズといった数多くの続編、関連作が勢力的に発売され、その人気は日本はもちろん世界にまで広がっている。岡田氏はシリーズ立ち上げ時からディレクターとして作品に参加し、2003年にアトラスを退社してガイアを立ち上げるまで、ほぼすべてのタイトルに関わってきたという、『女神転生』シリーズのすべてを知り尽くしてるクリエーターとも言える存在だ。

▲「まさか東大で講演をできるとは思ってもいませんでした。構内が3Dダンジョンのように複雑な構造で、ビックリしています(笑)」と挨拶した岡田氏。

まず最初に語られたのは、シリーズ第1作目の開発経緯について。小説『デジタル・デビル・ストーリー』をゲーム化するとき、岡田氏はストーリーラインの取り入れかたにもっとも頭を悩ませたと語る。岡田氏は、「スタートしていきなり「あなたが勇者です」と言われる」などの”お約束”が存在しない原作のストーリーに感銘を受け、できるだけすべてを盛り込みたいと考えていた。しかし、ファミコンでは容量的にそれが不可能。また、たとえ盛り込めたとしても「ゲームはユーザーが介入することで進行するインタラクティブ性の高いメディア。小説をそのまま持っていってもおもしろくなるわけではない」(岡田)という疑問もあったという。加えて、岡田氏にはもうひとつ大きな悩みがあった。第1作目の『女神転生』は原作こそあるものの、内容に関しては企画が先行してスタートしており、当初から”仲魔システム”や”合体”などのシステム入れ込むもことがある程度決定していたことだ。物語の魅力を失わず、かつゲームとしてもおもしろい……開発はこれを念頭に置いたうえで、取捨選択をするというスタイルで進められた。

その結果生まれた作品に対して、岡田氏は「ただ広いだけのダンジョンが残ってしまいました(笑)」と若干厳しめの自己評価をしていたそうだ。とは言え、いままでにないシステムや、単純な勧善懲悪ではないストーリーが評価され、結果的にヒットを記録。その後『女神転生』シリーズは、「多少売れたことにオゴリもあって、2作目からはオリジナルストーリーで展開させてもらいました(笑)」と岡田氏が語るとおり、原作を離れてひとつのRPGブランドとして展開されていくことになったのだ。

▲ゲーム内に”ヤクザ”や”ボディコニアン”など、現代的な敵が出てくる点については「マイブーム的なものをゲームに反映しました」と語る岡田氏。

『女神転生』シリーズの特徴と言えば、さきに挙げた仲魔システムや合体が代表的だが、多くの作品でゲームの舞台が現代および近未来に設定されている点も外すことはできない。なかでもスーパーファミコンで発売された『真・女神転生』は、東京に住むごくふつうの少年が、母親からコーヒー豆を買ってきてと言われるところから物語が始まるという日常的な雰囲気からスタートする作品。このほかにも、時代や設定は異なるものの多くのシリーズ作品に東京、もしくはそれに近い近代的な街が登場する。この理由について岡田氏は、「東京は世界でも稀に見る”破壊と再生をくり返す都市”。明治維新、関東大震災、東京大空襲。政治、経済的にも変動が激しいですしね」と説明。我々にとっては身近な”東京”だが、岡田氏に言わせれば、その存在感はRPGの舞台における王道”ファンタジーの世界”や”中世ヨーロッパ”と並べても、決して見劣りするようなものではない、というわけだ。

早くから、マルチストーリー、マルチエンディングを取り入れた作品が発売されていた点も『女神転生』シリーズの特徴のひとつと言えるだろう。物語の分岐は”ロウ(秩序)”ルート、”カオス(混沌)”ルートという相反するものが採用されているのだが、ここに岡田氏は「必ずしも秩序が正しく、混沌が悪いものなのか?」という思いを込めたと説明する。
「”悪魔”という言葉はそもそも人間が名づけたものだが、それでは実際に彼らが何をしたのか? ゲームを通じて善悪の価値観をユーザーと共有したかった」(岡田)。

『女神転生』シリーズは、さまざまな宗教の悪魔が敵として登場するということで、日本に比べて宗教問題にシビアな海外での展開は長いこと見送られてきた。しかし、『ペルソナ』シリーズからは一部悪魔の名前を変更するという形で、海外での展開もスタートし、十分な成功を収めている。現在はアトラスを離れてガイアに所属する岡田氏だが、海外メディアからは、いまなお「また『女神転生』のような作品を作らないのか?」という問い合わせを受けるという。海外をほとんど意識せずに作った作品がこうして受け入れられているのは、ゲームがおもしろいということを前提としたうえで、岡田氏の”善”と”悪”に対する疑問という、普遍的なテーマに寄るところが大きかったのかもしれない。

最後に岡田氏は「どうやったら遊ぶ人に楽しいと思ってもらえるか? ありきたりなソフトとは違うものが作れるのか? それを考え抜いた結果にオリジナリティーのあるゲームが生まれてくるのだと思います」と自身のゲーム哲学を語り、講演を締めくくった。

▲ご覧のように会場は満員。ゲームの話だけではなく、宗教に関する話題も展開するなどアカデミックな内容の講演となった。
▲講演終了後は、”神社・神道研究会”の学生と原作小説『デジタル・デビル・ストーリー』を描いた西谷氏を招いてディスカッションも実施。この中で岡田氏は、『真・女神転生』を作り続けていく中でマクロな世界観を描くことに限界を感じ、そこから『真・女神転生 if…』というミクロな世界を描いた作品が生まれたと開発秘話を披露。
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